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コラム

2021.04.06

◆赤本講演録勉強会報告◆「休業損害・逸失利益の算定②」(弁護士:下山田聖)

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 下山田 聖

下山田 聖
(しもやまだ さとし)

弁護士法人一新総合法律事務所 
理事/高崎事務所長/弁護士

出身地:福島県いわき市 
出身大学:一橋大学法科大学院修了
主な取扱分野は、交通事故、労災、企業法務。そのほか離婚、相続などあらゆる分野に精通しています。
社会保険労務士を対象とした労務問題解説セミナーの講師を務めた実績があります。

1 休業損害とは

休業損害とは、被害者が事故による負傷の治療・療養のために休業・不十分な就業を余儀なくされ、これにより「治療期間中に得られたはずの収入が得られなかった」という「過去に得られたはずの利益」を指します。

簡単にいうと、交通事故に遭い仕事ができなくなった結果、減少してしまった収入のことをいいます。

 

この休業損害は、基礎収入を前提に算出するのが原則ですが、事故当時に就労をしていなかった方の場合でも、問題になることがあります。

 

2 基礎収入の算定方法

確定申告書、住民税の納税証明書等の、公的な証明書によって証明することが原則です。

給与所得者の場合には、これらの証明書が入手できないケースは稀でしょう。

ただし、無申告者や税務申告上の収入を超える収入を主張する場合には、注意が必要です。

この場合には、公的な証明書を参考にすることができませんので、現実の売上金額、経費額を証拠に基づいて説得的に主張する必要があります。

 

3 基礎収入が認定できなかった場合の扱い

⑴書類の散逸・廃棄等の場合

書類の散逸、廃棄等により、残念ながら基礎収入自体を認定することができないというケースも起こり得ます。

この場合、原則としては、休業損害が認定されることはありません。

例外的に、収入は別にして就労の事実自体が認められるのであれば、最低賃金等を基礎にして計算する方法もあります。

 

⑵現実の収入が不明な場合 

 

現実の収入が不明の場合に、「賃金センサス」というものを利用して休業損害を計算することもあります。

「賃金センサス」とは、種別ごとにグループを設定し、これに属する全労働者の賃金を集計したデータのことです。

 

ただし、「賃金センサス」を利用した計算結果を休業損害として認めてもらうためには、当該被害者が、「平均水準又はそれ以上の稼働能力を有し、かつ、それを継続的に発揮できることを裏付ける具体的な基礎事情」が必要になります。

収入が不明の場合に、ただちに賃金センサスの計算結果を休業損害とできるわけではありませんので、注意が必要です。

 

4 個別の論点

⑴ 有給休暇を取得した場合の休業損害

自賠責保険の実務では、交通事故による通院等のために年次有給休暇を使用した場合に、その使用分の休業損害として計上することが認められています。

この場合、基礎収入を前提に、給与の日額を計算し、休業損害とすることができます。

 

⑵ (事故当時)無職者の休業損害

交通事故に遭った時点で無職(収入がなかった方)の場合、交通事故による減収をいうことができないので、原則として休業損害は認められません。

例外的に、交通事故当時に収入がなくても、将来的に何らかの収入が得られる見込みがあったような場合には休業損害の発生の余地がありますが、将来的な予測に基づく請求であることから、容易に認めてもらえるような性質のものではないことには注意が必要です。

 

5 おわりに

交通事故の被害に遭われたのが会社役員、個人事業主、高齢者、専業主婦等の方である場合、休業損害の算定について、保険会社との間の交渉が難航するケースがあります。

交渉をする大前提として、休業損害の額を客観的な資料に基づいて説得的に示す必要がありますが、資料が膨大となることもあり、個人の方では対応が煩雑となることもあります。

 

このようなケースの場合、ぜひ、一度、当事務所までご相談ください。

 


当事務所は、交通事故に関しては電話相談を始め、相談料無料(弁護士費用特約利用の場合は除く)で対応しております。

交通事故に遭われた際には、当事務所にご相談ください。

 

 

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