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コラム

2020.11.06

遷延性意識障害について

脳の機能

脳の構造

脳は大脳(前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉)、小脳、脳幹によって構成されています。

大脳は情報の識別や記憶、認知といった精神作用を担当し、小脳は運動の強さや力のいれ具合といった運動調節機能を担当しています。

 

脳幹は、呼吸などの生命活動の基本的な部分を担当しています。

 

遷延性意識障害

遷延性意識障害とその症状

遷延性とは

遷延性(せんえんせい)とは、長期にわたり病状が続くさまを意味します。

 

遷延性意識障害とは

遷延性意識障害とは、長期にわたる昏睡状態(意識障害)を示す症状で、一般的には「植物状態」とも表現されます。脳の生命維持に必要な脳幹部分が辛うじて活動できていますが、大脳と小脳のほとんどが機能していない状況です。

 

意識障害にも程度の差があり、遷延性意識障害(植物状態)に該当するかは、日本脳神経外科学会植物状態患者研究協議会が1972年に発表した「植物状態の定義」により次のとおり説明されています。

 

useful life を送っていた人が脳損傷を受けた後で以下に述べる六項目を満たすような状態に陥り、ほとんど改善がみられないまま満三カ月以上経過したもの。

(1) 自力移動不可能。

(2) 自力摂食不可能。

(3) 尿失禁状態にある。

(4) たとえ声は出しても意味のある発語は不可能。

(5) 「眼を開け」「手を握れ」、などの簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通が不可能。

(6) 眼球はかろうじて物を追っても認識はできない。

【参考文献】

中山研一・石原明 編 1993 『資料に見る尊厳死問題』、日本評論社128頁

 

 

 

症状

遷延性意識障害では、血圧、呼吸、心機能は自身で維持できますが、認知機能は機能していないとされています。

 

心肺機能や自律神経機能を維持する器官は正常であるため、医療や看護が十分に行われれば、生命を維持することは可能です。

 

しかし、遷延性意識障害の患者は、自己を認識することはなく、あくびなどの行動や外部からの刺激に反射的な反応が認められることはありますが、意思疎通はできません。

 

遷延性意識障害より少しだけ意識レベルが回復した状態に、最小意識状態があります。最小意識状態では、患者が自身や外界を認識している様子もあるようですが、その程度は限られており、また詳しいことはわかっていません。

 

ごくまれに遷延性意識障害から回復し、最小意識状態となる場合もありますが、機能の完全回復は難しいと考えられています。

 

遷延性意識障害の原因

主に、脳に外部から大きな衝撃が加わることによる、びまん性の脳損傷によって起こります。

「びまん」とは「一面に広がる」といった意味です。

 

脳のびまん性損傷がおきた場合、脳の各部位を連結する脳神経線維まで広範囲の損傷がおこるため、致命的な打撃を受ける可能性が高くなります。

 

また、このびまん性脳損傷の発生も2通りがあります。

 

・事故時に大きな衝撃を受け直接発生する場合。(衝撃で脳が激しく揺さぶられ、せん断力によって脳が損傷する場合です。「びまん性軸索損傷」と言われています。)

・事故時の衝撃で頭蓋内血腫(ずがいないけっしゅ)や脳腫脹(のうしゅちょう)等が徐々に脳を圧迫して脳全体を損傷する場合です。

 

後の方でも触れますが、外傷性の脳損傷では、その程度において遷延性意識障害にまではいたらない場合も多くあります。

しかし、この場合でも高次脳機能障害など、後遺障害を伴う場合が多いのが実情です。

 

そして、びまん性軸索損傷では、事故直後のCTなどの画像では、一見して異常が見られない場合も少なくありません。

その場合、脳外傷の存在を判断するために、意識障害の有無とその程度や長さ、脳室の拡大、びまん性脳萎縮の所見がないかを確認していくこととなります。

 

診断と治療方法

診断

診断は、上記「植物状態の定義」であげた項目に沿った判断と、脳損傷に関する他覚的な所見(画像資料)によります。

 

脳損傷を他覚的に確認するための検査方法としては、主に次のものがあります。

 

・CT(Computed Tomography)

X線を照射して得られた断層写真を、コンピュータによって再構築したものです。比較的短時間で撮影できるため、事故直後はCTで撮影されることが多いといえます。

・MRI(Magnetic Resonance Imaging)

水分の多い軟骨組織の抽出に優れ、撮影方法によって脳内の微細な出血痕や脳血流量の状態を確認することができます。

 

遷延性意識障害の診断にはCTとMRIのいずれも撮影されることが多いと思われます。

また、この他に、核医学検査としてSPECT(single photon emission computed tomography)やPET(Positron Emission Tomography)といわれるものがあり、総合的な検査によって診断されます。

 

治療方法

遷延性意識障害に対し特異的な治療法はありません。

治療は、患者に対し適切な栄養補給を行い、現状の状態を保つことが中心となります。

また、家族による常時介護が求められています。

 

特に、交通事故などの外傷性によって遷延性意識障害となった場合、意識回復の可能性は高くありません。

 

また、奇跡的に意識が回復したとしても、重度の後遺障害が残る場合が多く、自立して生活できる人はわずかというのが実情といえます。

 

後遺障害のポイント

【別表第1】

等級

介護を要する後遺障害

保険金額

労働能力喪失率

第1級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

4、000万円

100/100

 

後遺障害等級

遷延性意識障害は、昏睡状態が続き回復の見込みがほとんどなく、奇跡的に意識が回復したとしても家族の常時介護を必要とする重度の障害が残ります。

 

このため、身体機能は残っていますが、高度の痴呆があるために生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するものとして、最も重い後遺障害等級となる別表1の第1級1号に該当します。

 

損害

遷延性意識障害では、将来にわたる治療や付添人による介護を受ける必要があります。

このため、その損害項目も多岐にわたり、また損害が高額になることが多いです。

 

下記には、遷延性意識障害において考えられる損害項目をあげています。

損害については、その必要性や金額について争われることが多く、また下記にあげた以外の損害もあり得ますので、個別的な問題については弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

 

・症状固定までの入院治療費

・将来の治療費

・付添看護費

・付添交通費

・付添宿泊費

・将来看護費

・入院雑費

・将来雑費

・後遺障害逸失利益

・介護器具等の購入費など

・入院慰謝料

・後遺障害慰謝料

・近親者の固有の慰謝料

・遅延損害金

(・後見関係費用)

(・弁護士費用)

 

後見関係費用について、遷延性意識障害の患者は意思能力がないと判断されるため、ご本人で交渉や訴訟ができない状況にあります。

したがって、裁判所に対し後見人の選任申立てを行い、後見人が手続きを進めていく必要があります。

 

時折りご家族などがご本人に代わって保険会社などと交渉をしてしまうこともありますが、後になって争いになってしまうことも懸念されます。

どのような手段がとれるのか、ご家族としてどのような行動をとるべきなのかを含め、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

相手方の反論

遷延性意識障害の損害は上記のとおり多岐にわたり金額も高額もなるため、相手方から厳しい反論がされることが多くあります。

そして、時には「一般的に植物状態患者の平均余命は10年程度で、その期間をもって逸失利益等の計算をすべき。」などと心無い反論がされることもあります。

 

また法的な問題として、今後の生活費を控除するべきかどうか、中間利息の控除をどう扱うべきかなど難しい問題もあります。

 

このような問題も、弁護士であれば適切にアドバイスをすることができますので、ご相談をしていただければと思います。

 

高次脳機能障害

高次脳機能障害に関する後遺障害のポイント

遷延性意識障害にいたらない、もしくは遷延性意識障害から回復した場合にも重度の後遺障害が残る可能性があります。

その場合も症状の内容によっては、次のとおり後遺障害に該当します。

 

【別表第2】

等級

後遺障害

保険金額

労働能力喪失率

第2級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

3、000万円

100/100

 

 

【別表第3】

等級

後遺障害

保険金額

労働能力喪失率

第3級3号

1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

2、219万円

100/100

第5級2号

1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

1、574万円

79/100

第7級4号

1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

1、051万円

56/100

第9級10号

1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

616万円

35/100

 

 

この記事を執筆した弁護士
勝野 照章

勝野 照章
(かつの てるあき)

弁護士法人一新総合法律事務所 
弁護士

出身地:長野県 
出身大学:信州大学法科大学院修了
主な取扱分野は、交通事故、金銭問題等。また、刑事事件では31年2月に無罪判決(確定)を獲得し、現在も数多くの刑事事件で私選弁護人を務め、全力で依頼者の利益を追求しています。
所外の活動としては、長野青年会議所の理事を務め、長野県の発展に貢献しています。

 

 

 

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