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コラム

2022.01.11

◆赤本講演録勉強会報告◆「死亡慰謝料について」弁護士:細野 希

この記事を執筆した弁護士
弁護士 細野 希

細野 希
(ほその のぞみ)

弁護士法人一新総合法律事務所 
弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:新潟大学法科大学院修了
新潟県都市計画審議会委員(2021年~)、日本弁護士連合会国選弁護本部委員(2022年~)を務めています。
事故賠償チームに所属。主な取扱分野は、交通事故と離婚。そのほか、金銭問題、相続等の家事事件や企業法務など幅広い分野に対応しています。

1 はじめに

慰謝料は、被害者に生じた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償です。


慰謝料は、損害の内容、過失態様、職業、家族関係など個別具体的な事情を考慮して妥当な金額が決められることになりますが、赤本には一応の目安が記載されています。


赤本の慰謝料の基準は、あくまでも目安に過ぎないのですが、この目安を考慮して損害賠償金を検討することも多いので、今回は、死亡慰謝料について、赤本の考え方を説明したと思います。

2 死亡慰謝料とは

死亡慰謝料とは、死亡による精神的苦痛を慰謝するための損害賠償金のことです。


赤本の死亡慰謝料は、平成28年度版の赤本から一部改定されています。

  (改訂前基準)   (改訂後基準)
一家の支柱  2800万円 2800万円
母親・配偶者 2400万円 2500万円
その他 

2000万円
~2200万円

2000万円
2500万円

改定の経緯は、裁判例の水準や現代社会の家族構成等を考慮して決められているので、今後も基準は見直される可能性はありますが、令和3年時点では、赤本は、上記のような基準を死亡慰謝料の目安としています。


赤本によれば、この基準は、死亡慰謝料の総額であり、被害者本人だけでなく、近親者固有慰謝料も含まれているとされています。

3 一家の支柱とは

一家の支柱とは、被害者の世帯が、主として被害者の収入によって生計を維持されている場合をいいます。

子を扶養していた親や、高齢の親を扶養していた子などが該当します。

一家の支柱が死亡した場合、その家族は、精神面のみならず、経済面でも大きな影響を受けるので、赤本は、一家の支柱の死亡慰謝料について、最も高額な基準を示しています。

4 母・配偶者

専業主婦、家業を手伝う主婦、一家の支柱とまでは言えない有職者、家事や育児を行っている者などをいいます。

被害者が男性の場合も含まれます。

 
一家の支柱とまではいえなくても、それに準じるような立場であって、家庭内で重要な役割がある場合、死亡により、大きな影響を受けます。

そのため、赤本では、「その他」の死亡慰謝料よりも高い基準を示しています。

5 その他

赤本における「その他」とは、独身の男女(単身者)、学生、子供、幼児、高齢者、年金生活者、内縁関係にあった者などをいいます。


「その他」の基準は、他の死亡慰謝料の基準によりも金額に幅があります。

それは、被害者が子供の場合と高齢者の場合とでは、裁判例で認定される慰謝料の金額に差があることが多いので、それを考慮して金額に幅を設けていると考えられます。


また、被害者が妊婦の場合、妊婦本人が死亡していなくても、事故の影響により胎児が死亡した場合(死産、流産など)にも慰謝料を認めている裁判例があります。

6 おわりに

慰謝料は、被害者側の事情のみならず、加害者側の事情(例えば、無免許運転、飲酒運転、救護義務違反、あおり運転などの危険運転など)も考慮して、総合的に金額の妥当性を判断するものだと思います。


色々な事情によって、被害者あるいは遺族の精神的な苦痛は影響されるので、それに応じた適切な賠償額を決める必要があります。


赤本は、死亡慰謝料について一応の目安は示していますが、事件の内容、それぞれ異なっているので、賠償額を提案する際には、赤本の基準を一応の目安にしながらも、慰謝料の増額事由となる事情があるかを個別具体的に検討して主張することが求められます。


突然の死亡により、残された遺族の苦しみや悲しみは非常に大きいものになります。

生前や死後のどのような事情を踏まえて賠償額を決めればいいのか分からず、お困りの方は、一度当事務所へご相談下さい。

[参考文献]
民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準 平成28年版下巻(講演録編)及び平成29年版下巻(講演録編)/公益財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部


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